2009年3月16日月曜日

矢野誠一「人生読本 落語版」

最近、読んだ本で、お気に入りのもの。

「私は落語から多くのことを教えられた。けっして世のため、ひとのためにはならないが、貧しいながら楽しく人生を送るすべを学んできた。古今亭志ん生がしばしば口にした、
『こんなこと学校じゃ教えない』
このひと言は、まさに教育の妙諦で、その意味でも八代目桂文楽、五代目柳や小さんなどなど綺羅星のごとく並んだあの時代の寄席は、私にとって最高の教室だった。」

「……それにつけてもと思うのだ。
 大世紀末を、前倒しならぬ後倒ししたような、昨今の地に墮ちた世情を見せつけられると、石油を使うことなく、テレビとも、パソコンとも、携帯とも無縁の、不便で貧しくはあってもこころ豊だった落語の世界から、あらためて人生を学びなおしてもいいのではあるまいか。」

私は、それらに、たいした価値を見つけることができなかった。時代背景も、登場するする人々も。そこで起きる出来事も、その物語も。
この本で、それが誤りだったことに気づいた。

帯には、こう書いてある。
「落語には、現代人が忘れた素朴な真実がギッシリ!」

そう思う。この本の語りも、なかなかいい。暗い気持ちのときでも、読むと、つい、吹きだす。えらいな。

矢野誠一「人生読本 落語版」(岩波新書)

                              (H2O)

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